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【初心者向け】ピアノ上達ガイド

第1章失敗しないピアノの選び方第2章 ピアノを学ぶ方法第3章正しい姿勢と指づかい第4章ピアノの演奏を始めよう第5章楽譜の読み方の基本
第6章効率的な練習方法第7章目標を立てよう第8章楽譜の読み方をマスター第9章ペダルを使いこなす方法第10章ピアノに関する質問

第6章

効率的な練習方法

【初心者向け】ピアノ上達ガイド

初心者にとって、ピアノの練習は大変なもの。「練習時間が足りない」「なかなか上達しない」という理由で、習い始めてすぐにピアノをあきらめてしまうことも。ピアノをやめることは、音楽を演奏する喜びや満足感を失ってしまうことと同じです。そうならないためにも、効率の良い練習方法や、上達するコツを学びましょう。

質の高い練習をすれば、上達のスピードは上がります。ある研究によれば、練習に大事なのは量ではなく、質である事が明らかになっています。つまり、最初からきちんとした質の良い練習をする習慣を身につければ、練習することが楽しくなります。好きな曲を演奏することは、誰でも楽しいですよね。

この章では、練習内容の組み立て方、練習前の準備、そして練習で最大の効果を得るためのポイントについて説明します。

練習ルーティーン

1日に何分練習すればいい?

まずは1日20分を目標に練習してみましょう。慣れてきたとしても、基本的には、人間の集中力の限界とされる40分を限度にしましょう。毎日何時間も練習しているプロのピアニストでさえ、40分を限度として休憩を挟んでいます。とはいえ、もし弾くのが楽しくなってきてやめたくない場合は、そのまま続けても構いません。集中力が落ちたらすぐにやめて、頑張った自分を褒めてあげてください。

どのくらいの頻度で?

毎日練習することを習慣にしましょう。毎日というと難しく感じるかもしれませんが、1日にたった20分であれば続けられるはずです。20分というのは、私たちが毎日SNSに費やす平均時間の6分の1以下です。テクニックが上達するに伴い、練習することでポジティブな気持ちになるようになり、毎日の日課として練習することが楽しみになってきます。数日ピアノから離れていると、鍵盤が恋しくなってくるでしょう。無理をしすぎる必要はありません、週に5日弾くことができれば、それでも上出来です。

練習のタイミングは?

いつでも大丈夫。あなたに合った時間帯を選んでください。スケジュールに余裕がある方は、いくつかの時間帯を試してみて、自分に合った練習時間を見つけるのも良いですね。一人一人自分に合った練習時間は異なります。モーツァルトは深夜か早朝、シュトラウスは午前中に練習するタイプでした。周りの人のスケジュールも考慮する必要がありますね。ヘッドフォンが使える電子ピアノをお持ちなら夜でも練習できますが、アコースティックピアノで、家族だんらんのテレビの時間や、早朝に弾いたりすると反感を買ってしまいます。

場所は?

いつでも目に入り、すぐに弾ける場所が理想的です。部屋のスペースには限りがあるので、正しい姿勢でまっすぐ座って弾ける場所ならどこでも大丈夫です。(第3章「正しい姿勢と指づかい」を参照)。狭い屋根裏部屋で屈んで弾く、といったようなことは無いようにしましょう。キーボードの場合は、しまい込まず、常に弾けるような状態にセットしておきましょう。練習場所を借りたり、友人の家などでピアノの練習をする場合は、できるだけ近くで気軽に通える場所を探しましょう。毎日練習することが大切なのです。

練習前の準備

集中力を乱す物を排除する

練習は特別な時間と考え、最大限に集中できるようにしましょう。集中して練習することで、時間を効率的に使うことができ、練習の質が向上します。本来であれば、練習部屋にはピアノ以外何も置かれていないのが理想です。ですが、現実には難しいので、集中力を乱す物を片付けるようにしましょう。

キーボードの前にあるノート
気を散らすものを片付けよう!

家族や同居人に、練習中は話しかけたり邪魔しないようにお願いしておきましょう。きっとみんな理解してくれるはずです。テレビを消すのも大事。たとえ音が聞こえなくても、映像が視界に入ると気が散ります。スマホも別の部屋に置き、触れないようにしましょう。FacebookやInstagramのチェックも、20分ぐらいであれば我慢できますよね。

ウォーミングアップ

正しい弾き方で演奏すると、ピアノを弾くことは体中のエネルギーを指先に伝える全身運動になります(第3章「正しい姿勢と指づかい」を参照)。そのため、まず練習前には腕や手首をほぐし、手の力を抜いておきましょう。次に、音階やアルペジオを練習したり、ハノンなどのネットで無料で提供されている練習方法を実践したりして、ウォーミングアップをします。ここでのポイントは、まずは簡単なエクササイズから始め、だんだんと難しいものに移る事です。知っている曲をゆっくりと弾くことから練習を始めるのも効果的です。

Info

ハノンとは?

1873年にフランスのシャルル=ルイ・アノンが考案した60種の練習曲は、指と手首の柔軟性、スピード、敏捷性、筋力を向上させるためのエクササイズです。日本では「ハノン」という名前で親しまれ、ピアノ教本のベストセラーとして、今でも多くのピアノ教室で採用されています。オンラインで無料の楽譜も入手できます。

ハノンはテクニックを磨くのには役立ちますが、その音楽性の無さについて批判されることも多いです。技術を鍛錬することと、音楽性を豊かにすることのバランスを、上手く取ることが大切です。

練習の内容

レベルに合った練習曲で

ピアノ練習のモチベーションを上げる一番の方法は、好きな曲や、少なくとも聞いた事のある曲を演奏すること。とは言え、独学で自分のレベルに合った練習曲を選ぶのは意外と難しいもの。簡単すぎると飽きてしまい、難しすぎると練習を続けられなくなります。

例えば、好きなクラシック音楽を簡易的にアレンジしたバージョンの楽譜から始めてみるのも一つの手です。ちょうどいい楽譜は、ピアノの先生に聞いたり、楽器店で楽譜を探したり、オンラインのチュートリアル動画を見たりすることで見つかるかもしれません。flowkeyのようなピアノアプリを使ってみるのもいいでしょう。flowkeyでは、初心者向けの楽譜アイコンの左上には緑色のマークがついています。

初心者向けの楽譜を見つけるポイント:

  • 左手の音符が少ない
  • 3音以上の和音がない
  • 手のジャンプや素早い指の動きがほとんどない

曲を知る

その曲がどんなメロディーなのかをあらかじめ知っておく事は、練習の効率アップに繋がります。読譜力が上がれば、楽譜を見ただけでメロディーを想像できるようになりますが、それまでは曲を聴くことにより、その曲のイメージをつかんでおきましょう。指の動きが分かる演奏動画を見るのも良いでしょう。どの部分で指を交差させているのかなど、楽譜だけでは分からなかった事が見えてきます。

繰り返し練習する

弾きたい曲を選んで、どんなメロディーなのか分かったら、楽譜を4〜10秒ぐらいのセクションに分けて練習していきましょう。研究によると、これは脳が新しい複雑な指の動きを記憶するために、集中できる時間の限度であると言われているからです。

flowkeyのループ機能
flowkeyのループ機能

一度に曲の最初から最後まで練習する必要はありません。1日ごとに新しいセクションを覚え、それを繰り返しましょう。例えば:

  • 月曜日:最初のセクションを学ぶ
  • 火曜日:2番目のセクションを学び、両方のセクションを続けて弾く
  • 水曜日:3番目のセクションを学び、1〜3セクションを続けて弾く
  • 木曜日:4番目のセクションを学び、4つのセクションを続けて弾く。これを繰り返す。

セクションごとに練習していると、いざつなげて弾いてみたときに違和感があるかもしれません。そんな時は、練習したセクションの少し前から弾き始め、少し後まで弾き続けてみましょう。セクション同士をスムーズに繋げて弾けるようになり、曲全体のまとまりが出ます。

Info

よくある間違い:いつも最初からやり直す

弾いている途中でミスをした時、楽譜の頭から弾き直してしまう人がたまにいますが、これは時間の無駄です。新しいセクションを学んだり、上手く弾けない部分を練習する際には、その部分だけに集中しましょう。弾けるようになったら、一つ前のセクションもつなげて弾いてみましょう。

両手で弾く

はじめから、両手でピアノを弾くのは難しいかもしれません。 脳に以下の3つのことを同時にさせているからです:

  • 右手がすることを覚える
  • 左手がすることを覚える
  • 両手を上手く連動させる

このように、脳は右手、左手、両手で弾くことを、それぞれ別の作業として認識します。そのため、まずは右手と左手を別々に練習してから、両手で弾くことに挑戦してみましょう。毎日20分練習すると仮定して、1週間以下のように練習してみましょう:

  • 月曜日:最初のセクションを学ぶ。右手5分、左手5分、両手10分
  • 火曜日:2番目のセクションを、右手5分、左手5分、両手5分。その後、さらに5分かけて両方のセクションを続けて演奏。
  • 水曜日:3番目のセクションを、右手5分、左手5分、両手5分。その後、さらに5分かけて1〜3のセクションを続けて演奏。

上手く弾けるようになるには

「上達する」とは、これまで弾けなかった所が演奏できるようになること。そのためには、どの部分が上手く弾けないのかを特定し、早めに修正することが大事です。ややこしい音符の連打や、指遣いが登場しても、逃げずに頑張ってみましょう。

難しい部分の練習も、短いセクションに分けて片手ずつゆっくり弾いてみましょう。この記事で紹介した練習法を根気よく続ければ、いつの間にか弾けるようになっているはずです。

Info

よくある間違い:難しい部分をおろそかにする

上手く弾けるところを弾くのは気持ちが良いもの。でも、貴重な練習時間を費やして、改善すべき部分をおろそかにしてしまうと、一日何時間弾いても曲はマスターできません。まだ難しいと感じる箇所を見つけて、そこに集中して練習しましょう。右手、左手、ゆっくりと、両手、さらにゆっくりと、そして徐々にスピードを上げていきましょう。

このような練習を経ることで、ピアノがうまく弾けるようになります。上達のための練習と、楽しむための演奏を別々のものとして考えましょう。難しい箇所が弾けるようになったら、自分へのご褒美として、お気に入りの曲を心ゆくまで弾いて気分転換してみましょう。

ピアノを続けるポイントは、練習が億劫だと感じないようにすることです。次の章「目標を立てよう」でご紹介している、モチベーションを保つコツを掴めば、練習は一日の中で一番楽しい時間になります。次の章では、一貫したフィードバックを得ることのメリットや、目標設定についてご説明します。