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【初心者向け】ピアノ上達ガイド

第1章失敗しないピアノの選び方第2章 ピアノを学ぶ方法第3章正しい姿勢と指づかい第4章ピアノの演奏を始めよう第5章楽譜の読み方の基本
第6章効率的な練習方法第7章目標を立てよう第8章楽譜の読み方をマスター第9章ペダルを使いこなす方法第10章ピアノに関する質問

第1章

失敗しないピアノの選び方

【初心者向け】ピアノ上達ガイド

ピアノを始めることは、人生を豊かにするための第一歩です。ピアノを弾くことは、毎日の生活に彩りを与えてくれます。家の中で、ピアノは、安らぎを与えてくれる相棒のような存在になるでしょう。だからこそ、あなたにぴったりのピアノを選ぶ事はとても大切です。

ちょっと検索するだけでも、ピアノ、電子ピアノ、キーボードと様々な種類があり、専門用語が多いので戸惑うかもしれません。この章では、自分に合ったピアノやキーボードを選ぶ際に必要な、あらゆる知識をお伝えします。

全部読む時間がない場合は、この章の最後にある「クイックバイヤーズガイド」に飛んでも大丈夫。すでにピアノやキーボードをお持ちの場合は、次の第2章「ピアノを学ぶ方法」に進んでください。

市販のピアノは、大きく次の3種類に分かれています。

  • キーボード - 最も安く、汎用性が高い。音や手触りはアコースティックピアノとは異なりますが、初心者が練習する最初の鍵盤としては十分です。
  • 電子ピアノ - 大きくて高価ですが、アコースティックピアノの感触を再現していて、ミュート機能などの汎用性があります。予算とスペースに余裕がある場合には、良い選択肢。
  • アコースティックピアノ - 練習のクオリティと音質を考えるなら最良の選択肢。圧倒的に大きく、一番高価でメンテナンスが必要。
キーボード
ヤマハは、この写真のPSRモデルのようなキーボードを1979年から、作り続けています。

キーボード

キーボードは、値段もサイズも一番ミニマルな選択肢。鍵盤とスタンド部分が分かれているので、持ち運びも可能です。音が合成またはサンプリングされているため「電子キーボード」と呼ばれることもあります。内蔵スピーカーから音が発生し、ボリュームの調整が可能。ヘッドフォン出力もできるので、夜間の練習にも安心です。

キーボードは一番ミニマルなオプション。持ち運びができ、価格も一番安い。

キーボードは調律などのメンテナンスの必要がなく、ピアノ以外にもオルガン、弦楽器など様々な楽器の音色で演奏できます。また、現在販売されているのモデルの音質は、かなりピアノに近くなっています。

キーボードを選ぶ際に難しいのは、モデルにより鍵盤数やキーアクションが大きく異なるので、ピアノの練習に向いたものとそうでないものがある点です。

鍵盤数

フルサイズのピアノの鍵盤数は、88鍵盤(7オクターブ+3鍵)です。実際のピアノに近い体験をお望みなら、まずは88鍵をお勧めします。置く場所に制限がある場合は、一回り小さい鍵盤(76鍵:6オクターブ+3音)でも良いでしょう。初心者向けの曲では76鍵で十分ですが、中級以上になると少し難しくなります。ベートーヴェンの「エリーゼのために」のような古典的な曲では下の音が足りなく、ショパンの曲や、ドビュッシー、ラヴェル、プロコフィエフ、バルトークのような20世紀の作曲家の曲では上の音が足りなくなる事が多いためです。

鍵盤数が76鍵盤より少ないモデルでは、多くの曲でキーが足りなくなってしまいます。それでもでも置く場所が制限されているなら、61鍵盤(5オクターブ)という選択肢もあります。5オクターブは狭く感じますが、実はモーツァルトが作曲していた1700年代には61鍵盤が標準の鍵盤数でした。

キーアクションとタッチ

キーアクションとは、ピアノの音を出す仕組みのことを指します。キーボードには、アコースティックピアノのような機構がないので、鍵盤の重いタッチや感触を再現するために、さまざまな技術が使われています。高価なモデルでは、アコースティックピアノと似た機構をつけることで、タッチを実現しています。このようなモデルは比較的高価で、本体重量も重くなりますが、それでも電子ピアノやアコースティックピアノよりは小さく、安く、軽量です。

キーアクションガイド

ハンマーアクション アコースティックピアノのタッチを忠実に再現するため、各鍵盤にメカニカルハンマーがついたもの。最高品質で高価。

ウェイト 鍵盤に重りが内蔵されていて、本物のピアノに近いタッチが得られる。

セミウェイト 鍵盤に重りとスプリングを取り付けたもの。タッチのダイナミックさには欠けますが、初心者向けの最初のキーボードとしては問題ありません。

ウェイトなし (別名「シンセ・アクション」) 一般的にはプラスチック製の鍵盤で、スプリングでタッチを作ります。最も安価なモデル。

キーボードの付属品

サスティンペダル - ピアノについているペダルを踏むと、弾いた音の音色が変わります。アコースティックピアノや電子ピアノには初めからペダルが付属していますが、キーボードの場合は別売りのサスティンペダル(またはダンパーペダル)が必要になります。

サスティンペダルは、頑丈さや機能により価格が異なります。ピアノ練習に向いているのは、ペダル部分が金属製で、アコースティックピアノのペダルの踏み心地を再現した「ピアノスタイル」のレバーペダルです。予算が限られている場合は、四角いプラスチック製のペダルという選択肢もありますが、軽いペダルの場合には足が滑ったり、単純なオン/オフ機能しかないので、微妙なペダルの使い方の練習ができません。

正しい姿勢やテクニックを学ぶために、キーボードはテーブルではなくキーボードスタンドに置く。

スタンド - アコースティックピアノや電子ピアノと違い、キーボードには脚の部分がありません。机の上に置くのではなく、専用のスタンドを使って、正しい高さになるように姿勢を整えましょう。頑丈なスタンドを使った方が演奏時のフィーリングが良く、前後に揺れず安定します。鍵盤の高さ調整については、第3章「正しい姿勢と指づかい」をご参考に。

ピアノのペダルが何のためにあるのか、どのように使うのか詳しく知りたい方は、第9章「ペダルを使いこなす方法」をご覧ください。

電子ピアノ

電子ピアノは、アコースティックピアノの演奏体験を忠実に再現しながら、利便性と柔軟性があります。多くのモデルはハンマーアクションの鍵盤で(上記「キーアクションガイド」を参照)、木材や模造材で作られています。調律などのメンテナンスを必要としませんが、本物のピアノを演奏しているような感覚があります。

88鍵盤の電子ピアノ「クラビノーバ」
88鍵盤の電子ピアノ「クラビノーバ」

キーボードと同じく、電子ピアノにも様々な楽器の音色が搭載されています。また、フル88鍵盤を搭載しているので、弾ける曲が限定されることもありません(上記「鍵盤数」を参照)。

欠点は、アコースティックピアノほどではないですが、かなりのサイズと重さがあり、簡単には移動できないことです。購入前には自宅のどこに置くのかよく検討してください。一般的に、電子ピアノはキーボードよりも高価ですが、アコースティックピアノよりは安価です。

Info

USB MIDI接続

多くのキーボードや電子ピアノにはUSB MIDI接続(Musical Instrument Digital Interface)が搭載されているので、PCやタブレットなどの端末に接続できます。ピアノアプリやソフトウェアなどを使用して、デジタル楽譜の楽曲を弾いたり、自分の演奏を録音したり、ピアノ学習アプリを使ってレッスンできます。

アコースティックピアノ

ピアノは、何世紀にもわたって西洋音楽を形作ってきた楽器です。この深い音色と演奏体験を味わえるのはアコースティックピアノだけ。弾いているうちに、指先から部屋中に音が響いてくるのを感じられるでしょう。この「アコースティック」な音色は、物理的な部品だけで生み出されています。電子機器やサンプリング、スピーカーなどは一切使用していません。

アコースティックピアノの欠点は、圧倒的に高価なこと。買う時だけではなく、移動するのにもお金がかかりますし、メンテナンスも必要です。ピアノの部品は温度や湿度の小さな変化により音が変わるので、定期的な調律が必要です。ピアノをどこに置くかも検討しましょう。乾燥しやすく反りやすいので、ジメジメした部屋や暖房の近くに置く事はやめましょう。

高品質のピアノは何年たっても価値が下がらないので、投資と考えてもいいかもしれません。裏を返せば、安い「お買い得品」は傷んで修理代がかかることが多いので、中古を買う際には気をつけましょう。楽器を購入する際には、必ず専門知識を持った人の意見を聞くべきですが、中古ピアノの場合は特に重要です。また、アコースティックピアノを弾きたいけれど、ピアノをずっと続けるかどうかわからない場合は、ピアノのレンタルサービスを利用したり、ピアノ付きの練習室を使うこともできます。

アコースティックピアノには、グランドピアノとアップライトピアノの2種類があります。

弦とダンパー
アコースティックピアノの中には、弦、ハンマー、ダンパーなどが設置されています。現在のピアノに使われている形式のピアノアクションは、なんと今から300年以上前の1709年に発明されたものなのです!

アコースティックピアノの構造

鍵盤を押さえるとハンマーが動き、弦を叩くことで、ピアノの音が生まれます。アコースティックピアノの鍵盤がキーボードより重いのは、このハンマー機構によるものです(「ハンマーアクション」キーボードは、このタッチ感を再現しています)。弦がハンマーに叩かれると振動が発し、楽器の内部に反響します。そして残響音が発生し、入念に設計された穴を通ってピアノの外に出て行きます。

サンプラーやシンセサイザーを使ってアコースティックピアノの弾き心地を完全に再現するのは難しいですが、技術の進歩は早いもの。現代の電子ピアノは、アコースティックピアノの音をかなり本物に近く再現されています。安物のアコースティックピアノを買うぐらいなら、良い電子ピアノを買った方が、より良い演奏体験が得られるほどです。

グランドピアノ

クラシックのコンサートでは必ず使われる、独特の曲線の形状を持った大きなピアノです。弦は水平に設置されています。グランドピアノでは、ハンマーは重力の力でひとりでに弦から離れるので、自然なタッチで鍵盤を弾くことができます。高いダイナミックレンジを持ち、リビングルームや大きなコンサートホールなど、小さい音から大きな音まで綺麗に鳴り響く、豊かな音色を持ちます。

コンサートグランドピアノ
グランドピアノは世界中でアイコニックな存在として認識されています。元々は、グランドピアノは富と地位の象徴であり、そのほとんどはヨーロッパの王室のために製造されていました。

アップライトピアノ

ワイルド・ウェストのサルーンやバーでのブルース・バンドなどで弾かれる、背の高い長方形のピアノ。音質はグランドピアノと似ていますが、キータッチが少し異なります。弦が縦に設置されているため、ハンマーアクションにスプリングが必要となるからです。また、グランドピアノに比べるとダイナミックレンジが少し狭いです。床面積が小さいため、場所を取らずに置くことができます。

ヤマハのアップライトピアノ
アップライトピアノは、音質や演奏体験をどちらも妥協することなく、コストとスペースを節約することができます。
Info

ダイナミックレンジとは? なぜ重要?

ダイナミックレンジとは、鍵盤を押さえた際に発する音量の範囲の事です。つまり、高いダイナミックレンジが広いほど、非常に小さい音から大きな音まで、幅広い音量で弾くことができます。ダイナミックレンジが狭いと、鍵盤を軽く弾いた際に音がほとんど聞こえません。曲を弾く際には、音量を上手にコントロールすることで、情熱と感情を表現することができます。

例えばベートーベンの「月光ソナタ」。この曲には繊細な音から力強い音まで、幅広い音量の違いがあります。上手なピアニストは、同時に複数の音のダイナミックレンジをコントロールすることで、曲に豊かな表情をつけることができるのです。

その他のアクセサリー

椅子

ピアノを弾く際には、適切な高さの椅子は欠かせません。安定性のある大きい椅子は長時間でも快適に弾けますが、一般的には高価です。正しい姿勢や座り方ができるよう、高さを調節できる物を選びましょう。詳しくは、第3章「正しい姿勢と指づかい」をご覧ください。

メトロノーム(オプション)

メトロノームは、設定したテンポ(速度)に合わせて音を出します。必ずしも必要な物ではありませんが、一定のテンポで弾きたい際には役に立ちます。ただ、自分の力でリズムを保つ力をつけるためにも、使いすぎはやめましょう。ほとんどのキーボードや電子ピアノにはメトロノームが内蔵されていますが、アコースティックピアノにメトロノームが必要な場合は、スマホなどの無料アプリも使えます。

クイックバイヤーズガイド

初めてピアノを買おうと検討中の方にとって、ここまで登場した用語を一度に覚えるのは大変ですよね。そんなあなたに、クイックバイヤーズガイドをご用意しました。以下の質問に答えるだけで、あなたにぴったりのピアノの種類が分かります。

  • 音、タッチ、ダイナミックレンジは?
  • 予算はいくらぐらい?
  • 他の楽器の音色(オルガン、シンセサイザー、弦楽器 等)も弾きたい?
  • 設置スペースは?
  • 外に持ち出して演奏したい?
  • メンテナンスに年間1〜3万円が出せる?
  • 練習時間は?/近所迷惑にならない環境?
  1. キーボード

  2. 電子ピアノ

  3. アコースティックピアノ

キーボード電子ピアノアコースティックピアノ
音質良いとても良い最高音質
タッチ普通良いとても良い
ダイナミックレンジ狭い〜広い、モデルによる広い最も広い
価格安価(1万円以下)中程度(5〜40万円)高価(40万円以上)
音の種類様々な楽器の音キーボードの音の種類の一部なし
サイズ
持ち運びやすさ簡単難しい非常に難しい
調律・メンテナンスほぼなしほぼなし定期的に必要
音量サイレントモードあり(ヘッドホン)サイレントモードあり(ヘッドホン)大きい
Info

その他のタイプ

ピアノの種類は非常に多種多様で、全てが上記のカテゴリーに完全に当てはまるわけではありません。例えば最近では「ハイブリッドピアノ」と呼ばれる、アコースティックピアノにミュート機能やデジタル機能がついたモデルもあります。小ぶりさと、弾いている感をどちらも実現した、キーボードとデジタルピアノの間のような存在です。

様々な選択肢を検討し、ピアノ講師や楽器店のスタッフなど、専門家の意見を聞いてから選択するようにしてください。各楽器の長所と短所を知ることで、あなたにぴったりのピアノがきっと見つかるはずです。